皆さんは「インターポール」という言葉を聞いたことがあると思います。International Criminal Police Organization (ICPO) 国際刑事警察機構の呼名です。国際犯罪への対応だけでなく、複数犠牲者が発生した災害にも関わり、その災害犠牲者個人識別会議が毎年開催されています。その中には5つの小グループが存在します。「警察」「法病理・法人類学」「遺伝学」「指掌紋・顔認証」そして「法歯学」です。この会議は学術的な話をすることが主な目的ではなく、各国の専門知識を持つ者による実践的な取り組みや、この1年間に発生した災害犠牲者対応の実際を発表し合い、問題点を議論します。
コロナ禍中この会議はハイブリッドでの開催でしたが、今年から対面のみ、筆者が現地開催に参加出来たのは4回目です。毎回つくづく思うのが、災害犠牲者個人識別において、日本を含め「法歯学」が難しい立ち位置にある国が多いことです。学究的立場にある法歯学者が、実際に災害犠牲者対応の指揮官となる警察と協同できる形が構築され、その役割を確固たるものにできている国はさほど多くないようです。その有効性、重要性を熟知する者たちが集まった議論の場にいると、我々が努力すべきことがまだまだ沢山あることを痛感します。